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男の子のバイブル「赤頭巾ちゃん気をつけて(庄司薫)」

1969年芥川賞受賞

赤頭巾ちゃん気をつけて

そしてそんな時ぼくは、いつもなにかとても幸福なあたたかい気持ちを抱いて帰ってくるのだだった。どう説明すればよいのか分らないけれど、なにかおおらかな愛情のようなもの、こんなにも沢山の人々がこんなにもいろいろなことをしながら、でも結局はそれぞれが愛やら幸福を求めてめいめい精一杯に生きているのだ、という気持ちになって。(略)そしてぼくはそういう時すごくいい調子で、ひどく素直に、あの兄貴の言った「みんなを幸福にするにはどうすればよいか」をぼくは一生懸命考えてやるぞ、なんて思いながら帰ってくるのだった。

もう、本当にこの小説だけは愛しすぎていて困ってしまう。

絶対的な僕のバイブル。

何度読んでも泣いてしまうし、どうしようもないくらい嬉しい気持ちになる。本当にこれは可笑しな話で、感動して泣くんじゃなくて、嬉しくて泣いてしまう。

この小説の主人公、高校卒業したばかり薫君は「みんなを幸福にするにはどうすればいいか」なんてことを考えながら、悩んで悩んで悩みながら、日常の中の一つ一つの出来事、風景に向き合っている。

もちろん、小説の中の人物なんだけど、こんな人がいてくれたのが嬉しくて仕方なかった。
僕にとって彼は親友、戦友であり、そして絶対に失いたくない、自分の一番深いところに突き刺した矢のようなもの。

いろんなことを考えすぎて疲れて、でも周りは足を引っ張ってきたり、自分のことにしか感心が無い中で、薫君は全てから逃げてしまおうと思うんだけど、たまたま出会った小さな女の子と本屋に行って、その子のために何種類もある童話「赤頭巾ちゃん」から、その子のために飛びきり素敵な一冊を選んであげる。
その一冊は「見知らぬ人を信じちゃいけません」「道草しちゃいけません」なんていう教訓を繰り返すようなものじゃなくて、見知らぬ狼を見ても、こんにちはなんて言ったり、おばあさんのために森に咲いてるお花を摘んであげようと道草したり、狼に食べられたあとで、おなかからニコニコして出てくる可愛い素直な赤頭巾ちゃんの話であり、その行動を通し、自分がどんな人間になろうか、どのような社会を望むかを決心する。

中二病

僕は、この薫くんの辛さも、赤頭巾ちゃんを選んであげた女の子からの救いも痛いほど分かる。

僕も17歳の頃からずっと「どうすれば誰も悲しまない世の中になるのだろうか」なんて、中二病全開なことを考えて生きている。
ホントはそんなの全部投げ捨ててしまいたいんだけど。
もうここまでくると誇りのようにも思えてきてしまった。

学生運動

学生運動を中心に時代背景がとても濃い作品ではあるが、結局のところ「男の子はどうあるべきか」という普遍的なテーマと、知性の可能性への挑戦というようなところなんで、半世紀近く前の小説だが、今の世代にとっても考えさせられるところはとてつもなく多くあると思う。

時代背景の違いという部分で象徴的というか考えてみたのは、薫くんにとっては、今すぐにでも社会の制度やらなんやらと戦う場が「はい、どうぞ」と用意されていた時代だったのだと思う。それに対して、僕たちの時代というのは「社会の中で」どう生き抜くかという個々の戦いである。

その世代の人に聞くと誰もが、本当に世の中のことを考え抜いて行動していた人はほんの一握りだったと言うのだけど、 高校生の頃の僕からしてみれば(高校生の頃の僕はこの時代に強く憧れを持っていた)、はっきり自分の考えがまとまっていない状況でも誰かの言葉に乗っかるだけで「それらしいこと」が出来てしまう恐ろしい時代(環境)を心の隅で羨ましくも思えていた。

つまりね、お前が読んでるかどうかは知らんけどね、みんなが言うことにゃいまや狂気の時代なんだそうだよ。つまり知性じゃなく感性とかなんとかだ。まあおれには、どうして感性やなんかが知性から切り離されて存在するのか全く分らないけれどね 。

もし、いつか、「好きな小説は庄司薫の赤頭巾ちゃん気をつけて、です。」なんて人に会ったら、そのときも僕はまた嬉しくて泣いてしまうんだろうな、なんて思う。

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KKK

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代表中二病社会学会
WEB関係の仕事と並行し、若者の人間行動学に関する仕事をしています。 他、新宿にてイベントBARを三店舗運営。中野にてシェアハウスを運営。

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