総括出来ないまま解任されたハリルジャパンの総括
まさかのハリル解任。
ハリルの目指すサッカーの方向性についていろいろな議論がメディアでもネット上でも行われていたが、解任となりその結果はわからないまま。
これまでの試合から得られる判断材料は多いにしても、総括としては本番での結果以外に価値があるのか?
ハリルホジッチ監督は正しくそういう監督のはずなんだと思うだけに残念に思っている。
確かに、良い結果を示し続けたわけではないが、結局はピークを本戦に持っていけるかということなんじゃないかというのは、前回のブラジル大会で日本サッカー界は嫌という程味わったと思うんだけど「とはいえ、これでは・・・」ということなのだろう。
確かに直近のベルギー遠征でもパスを繋ぐことが出来ておらず、ひたすらに縦に出すが簡単に奪われてしまう展開が続いた。その光景に対してサポーターや教会は絶望感を感じていたし、選手からも不満はあったのかもしれない。
ハリルのやろうとしていることは理解できるし、正確な評価なんてのはワールドカップの結果が出てからだってはっきりと言い切れるものではないのだろうけど、今の日本においてマッチする方向性だったのかという問いに対してはネガティブな答えが多いだろう。
しかし、現時点での評価軸と、日本サッカーを長い目で見た時の評価軸、そして本番での結果、これらは別の軸で考える必要があると思う。
選んだのはサッカー人気と未来?
色々な陰謀論はあるが、長い目で見てサッカー人気を意識することは日本サッカーの発展という意味では重要で必要なことだと思うし、戦術や選手選考の面で日本のサポーターにとって魅力的でなかったとしたら、そんな理由で解任されるのは気の毒だと思いつつも、賛同はできないまでも理解はできるし納得もできる。
確かに金銭面も日本サッカーの発展には必要な要素だと思うが、スポンサーが選手選考にまで口を出していて、その意に反する監督を解任するというのでは、倫理的に許されることではないし、せめて始めの契約で盛り込んでおけと…
西野監督がどんなサッカーをするのか打ち出していない以上、まだ確定したわけではないし、今後の成長と共に少しづつ調整を重ねて行くことになるのだろうが、ある意味では現時点で日本サッカーの目指す方向性を示したと言えるかもしれない。
多分、ハリルジャパンでは落選候補だった本田も岡崎も選ばれるし、武藤なんかも一気にチャンスを得るだろう。
つまり、やっぱり知名度のある選手や視聴率、話題性、スポンサー、そういうものって大事だよねと。
スタイルとしては、ザックを目指しているわけではないと思うけど、良くも悪くもザックジャパン時のスタイルに近いサッカーに近づいていくのだろうなあと。
日本に合わなかったのは否めない
ハリルの求めていた「デュエル」や「縦への意識」は日本サッカーに足りない部分として歴代の代表監督たちも口にしていたことで、そこにフォーカスを当てるのは大事だと、これまでブログで書いてきたけど日本サッカーの人気という点を気にしなくてはいけない立場からしたら、受け入れがたいものだったんだろうなあとは思う。
代表監督に対する最終的な評価はアジア予選、ワールドカップ本戦での結果だと思うから今回は言及しようがないけど、三人で囲んでも突破されてしまう日本選手で、ハリルの目指したサッカーは難しいのではないかという感覚はマリ・ウクライナ戦で鮮明になったと思う。
ではどんなサッカーを求めるのか…やはりザックジャパン時代のボール保持率を上げて守備の機会を減らしていくことなのだろうか。
ボールを持って崩すことはできなくても、ポゼッションを上げて守備の時間を減らすという考え方は世界のスタンダードからは外れているが、日本サッカーの資質には合っていると思える。
ポジショニングに関しての教育が進んでいない国にとって、前線からプレスをかけて後方の選手がケアするという考え方は合わなかったのだと思うし、個人での突破力が不足しているメンバーでこの突破からの得点というのも期待は薄かったのではないかと考える。
ザックジャパン時代は最終的に、攻撃に比重を置きすぎて攻守のバランスが取れていなかったと思うが、基本的な考え方はやはりザックジャパン時代の流れに戻るのかなと。
その上で、縦に早く攻めるプレーを選択できる状況判断力とスキルを上積みしていくことが必要という結論になるのかなと。
フィジカル面や戦術理解度やポジショニングはもちろん、サイドチェンジの精度やひとつひとつのパスやトラップ、シュートの正確性と速さという選手自身の能力の向上が求められるし、個の能力が変わらない限り、仮にベストな方向性に向かったとしても限界があるということは欧州サッカーファンが感じていることだろう。
いくら何でも同情してしまうがそれも現実
香川、酒井宏樹、吉田という中心選手がいない中で、結果を求めるとなると…
酒井宏樹の代役をこの時期まで見つけられなかった事に問題があるとも言えるかもしれないが今の日本サッカーでは同情してしまう
現にウクライナ戦なんて失点も右サイドからのもので、明らかに右サイドバックの宇賀神、高徳が穴になっていた。
これにしても、左サイドバックが本職の宇賀神の右サイドバックでの起用は批判にも繋がるが、同時に遠藤航も怪我をしていて、高徳は追加招集扱いだったたあの状況だから出来た最後のテストの機会だったとも言えるのだろうか。
ハリルのことだからいても試したとは思うけど、やはりあの2戦の出来が解任に繋がる見方をしていだというのなら、それは告げられているべきだろう。
何よりサポーターとしては、あの2戦が解任を考える試合だったのならば、テストではないメンバーでの勝ちに行くサッカーを見てみたかった。
単純に、吉田と酒井宏樹がいるかいないかだけで、試合内容は大きく変わっていたと思いながら観戦していた。
左サイドバックの質の低さはもちろんだが、中盤を経由しないビルドアップにおいて前線へのフィード能力を考えると、そもそも代役の質を考えると、あんなもんにしかならないだろうなと。
そういう意味で、特定の選手がいないと形にならないというか、個の能力に依存したビルドアップの形しか作れていないというのは大きな問題だったのだろうなと。
大島の起用などを考えると、ビルドアップに関しては選択肢を増やすことも視野に入れていたのかもしれないし、本戦に向けてこれから用意することも考えていたのかもしれないが…そこはもうサポーターには分からない領域で、『ハリルのやり方からして本戦に向けて何か用意していくのではないか』という希望的観測は、ハリル擁護派と否定派を分ける大きなテーマだったとも思う。
香川は不明確な存在だとしても、酒井宏樹、吉田は間違いなく主力選手であり、恐らく試合毎に大幅なスタメン変更をするであろう本戦でも固定される存在だったと思う。
これまでの起用を見ても軸になる選手は大迫、原口、長友、吉田、酒井宏樹だけじゃないかと。
怪我ということで本番でも起こりうることとは言え、数少ない主力選手のうち2名も召集出来ていない試合で、判断というのはなぁというモヤモヤを感じてしまっている。
本戦に向けてテストをしていたら、実は解任に繋がる重大な試合でした!というのでは、あまりにアンフェアじゃないかと。
もちろん試合内容以外の選手との信頼関係なども解任の判断材料だったのだろうけれども。
純粋に楽しみだった本選の戦術
今回の解任劇を通して面白いと感じたのは、改めて日本代表に求めているものが人それぞれであり、その背景にはやはり前回大会の影響が強く残っているように感じたこと。
ハリル解任を求めていた人の傾向として、面白くない、日本人に合っていないものを求めている、親善試合で結果を出していない…などいろいろな意見があるのに対して、ハリルの本選でのサッカーに期待していたのは、前回ワールドカップの対策を取られるのが分かっていながらの素直なサッカーに呆れた人や、選手主導のサッカーに対する違和感、もしくは表面的なポゼッションに対する過剰な拒否反応などなど。
僕としてはアルジェリア代表を率いてのワールドカップでは毎試合異なるフォーメーションと戦術で世界中のサッカーファンを魅了した監督だけに、親善試合の結果はともあれ本戦での戦術について期待をしていた部分が大きい。
今回の決断に対して許せない!とまでは思えないが、ハリルがどんな戦術を用意するのか楽しみだなーと。
そして、何よりもハリルホジッチ監督に対しての一人の人間としてのリスペクトや日本人としての誠意みたいなところが大きいようにも感じる。
多分僕は下記の記事を中心にハリルの生い立ちや、人生観みたいなものに惹かれていたところも大いにあるのだと思う。
https://www.soccer-king.jp/sk_sp_feature/article/731488.html
本当に自分の利害に全く関係のないテレビン前のサポーターとしての意見で、現実はまた別の軸でいろいろな決断が行われるのであり、僕はただ見ることのできなかったハリルジャパンの本番での戦術なんかを今でも楽しみにしながら悲しむだけなのです。
最後に誰よりもハリルジャパンで輝いた原口のコメントでさようなら。
原口「すごく人間っぽい人だったというか、感情をぶつけてくれる監督だった。僕がオーストラリア戦でPKを与えたときも、すごく人間っぽいというか、愛情を感じました。『次だ』ということ、『失敗は誰でもあるから』ということを、声をかけてもらって、次につながったので、あのシーンはすごく覚えていますね」

KKK

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