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中二病患者の始めたシェアハウスが解散する理由

僕がシェアハウスを作ろうと思ったきっかけ

シマシマ

今月末で、一年半ほど続いたシェアハウス「ストライプシープ」が解散することになった。

僕は現在、海外で生活していて立ち会うことは出来ないが、これまでの軌跡を書き記しておこうと思う。

二年ほど前、カナダから帰国したのち、住む家の無い僕は蒲田にある彼女の家に転がり込んだ。

悪くない生活ではあったが、職場である新宿から若干遠いこと、通勤ラッシュの京浜急行が尋常ではないこと、また仕事の打ち合わせや飲み会などが新宿・上野などで行われたあとは必ずといってよいほど終電を逃すなど、立地的に不都合が多かったし、単純に一人の空間が欲しいと考えていた。

そんな時、「シマシマ」という漫画を読んでいて、シェアハウスに関心を持った。

「シマシマ」とは、2008年から2010までモーニングで連載されていた漫画で、2011年には矢田亜希子が主演でドラマ化もされた。

容姿端麗な草食系男子4人が添い寝屋という仕事を通して自分の未来を模索し、後半には4人でシェアハウスを始め、ぶつかりながらも成長していくという作品。

「ストライプシープ」というシェアハウスの名前も、漫画で登場する添い寝屋の名前から頂いた。

もともとシェアハウスはカナダで経験し、とても楽しかったし、社会学でも若者のシェアハウスへの関心が高まっていること、新しい共同体の可能性についての研究を何度かしたことがあったので、自然と導き出された答えだった。

初めはビジネスとして利益を出しながらの運営を考えていたが、オーナーとお客さんという関係よりも友人としての関係を構築したほうが引き出せるデータも多いと思ったし、仕事や他の勉強に時間を割きたいと考えていたので、みんなで家賃を支払いながらやっていくことにした。

メンバー募集

三畳の部屋

WEB業界に入ったばかりで、多くのクリエーターから色々な話を聞いて勉強している時期だったこともあり、夜のリビングでそんな話をしながらお酒を飲んで過ごせたら有意義で楽しい時間が過ごせるだろうと思っていた。

しかし、クリエーターと呼ばれる、独自の感性を大事にする人種と生活するのは少し難しいと思ったし、似たもの同士で生活しても刺激が足りないので「スタイリッシュ」という、ふわふわしているが、ハードルだけが高くなってしまうワードを選んだ。

シェアハウスに特別な思想や特化したジャンルがない分、入り口を広くし、住居人の質を高めることで、「このシェアハウスに住んでみたいな」と思ってもらうポジティブな要素を感じてもらうことが狙いだった。

既に信頼関係を築けている友人とシェアハウスを始めるのならば例外だが、コンセプトがしっかりしていなければ、個人のシェアハウスは続かないというのは明白ではあったが、緊急で新しい住居を準備する必要があったこと、一年間という短いスパンで考えていたこともあり、クリエーターに限らず、ルックスや、趣味などを含めて「スタイリッシュ」と定義付けたが、そんな曖昧なコンセプトは一年も経てばただのカオスになってしまうということを改めて身をもって学ぶことになる・・。

僕はあくまでセカンドハウスとしての利用を考えていたので、信頼できる友人を引き込もうと思い、カナダに行く前に吉祥寺でルームシェアをしていた友人を誘った。

彼は高身長、イケメン、読書・アニメ好きということで条件にピッタリだった。

常にお金に困っているので価格で魅力を打ち出せば即決するだろうと思っていたが、予想を超える早さで即決してくれた。

そして、反応を確認するためfacebookに下記の募集文章を載せてみた。

[募集1]
シェアハウスを作ります。
ビジネスとしてやろうと思い進めていたのですが、僕の好きな漫画の一つである『シマシマ』という漫画を読んでいて、考えが変わりました。
五人くらい住める一軒家で、みんなでお酒を飲みながら色々話せたらなと。
コンセプトは「スタイリッシュ」。
イケメン、スタイルがよい人、ファッションや文学、社会学が好きな人などなどで集まれたらなと思っています。年齢、性別、職業不問。
金額は一人頭4万円程度、場所は日吉など都心から20分以内のところで探す予定です。

反応は上々で、メンバーはすぐに集まりそうだし、誰かが抜けても次の人がすぐに見つかるだろうという手応えを感じた。

「テラスハウス」というテレビ番組が流行っていたこともあって、女性からの申し込みがとても多かった。

初めは男四人で住もうと考えていたが、面白そうなメンバーが集まったので男性2人・女性2人という構成になった。

WEB業界で働く中二病患者
飲食業界で働く天然ボケ
美容業界で働く元キャバ嬢
インテリア業界で働くホスト狂い

という奇妙な人間が集まった。

物件探しの難しさ

家電を運ぶ写真

物件探しはなかなか難しかった。

探していた条件は「3LDKで、三畳程度の狭い部屋のある一軒家」「新宿まで20分以内」「駅まで徒歩10分以内」「家賃は月16万円以内」「煙草の置いているコンビニの近く」「セブンイレブンの近く」というものだった。

条件に合う物件を見つけても、シェアハウスを認めてくれないオーナーがとても多かった。

粘って何とか条件全てに合う物件を探し出した。

その後の契約手続きにも苦労したが、粘った甲斐があり「中野駅から徒歩6分」「新中野駅から徒歩7分」「家賃14万円」というなかなかの好条件のもとシェアハウスがスタートした。

テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、テーブル、椅子など、リビングの家具や電化製品も知人たちから譲ってもらえたので、新たに購入したのは洗濯機くらいで初期費用を随分抑えることが出来た。

友人たちに手伝ってもらい、汗を流しながら電化製品や家具を運んだり、車を借りて引越しを進めている最中に、車を擦ってしまったりとトラブルもあったが、今になれば失笑できるくらいの思い出にはなった。

サブカルチャーの聖地 NAKANO

ストライプシープ_僕の部屋

カナダでアニメの素晴らしさを叩き込まれて帰国したばかりの僕にとって、サブカルチャーの聖地NAKANOは刺激が強すぎた。

中野ブロードウェイに毎日通い、アニメ関連グッズに毎月何万円と飛んでいく。

そして三畳の僕の部屋は、生活必需品は少ないのに、アニメ関連グッズで埋まり足の置き場が無くなった。

彼女と住んでいた蒲田の部屋をメインにして、シェアハウスはセカンドハウスとして利用する予定だったので広い部屋が必要なかったはっずだったのだが、職場から近く、三畳主義者にとって完璧な部屋を完成させてしまったことにより、結果としてシェアハウスをメインの住居とすることになり、日用品も増えていった。

因みに、何故僕が物件探しをハードにさせるにも関わらず、三畳の部屋にこだわる三畳主義者なのかは話が逸れてしまうので、後日改めて書こうと思うが兎にも角にも計算が狂ってしまった。

中野はブロードウェイのみならず、おいしい珈琲屋や、お洒落な飲食店、古本屋や中古レコード店もあり、とにかく楽しいのだがお金が飛んでいく。

そして、中野にはドンキホーテがある。

元キャバ嬢とホスト狂いの女性住居人の二人は何かあると、すぐにドンキに行きたがる。

噂には聞いていたが、このタイプの人達は本当にドンキが好きなのだと感動したものだ。

しかも店員にタメ口で話しかける様を見て、僕はカルチャーショックと嫌悪を感じると共に、普段関わることの無い人種と関係を構築していくのかと、研究対象として興味深く感じた。

シェアハウスでの生活

三畳の部屋

取り立てて思い出すことは特に無いのだが、ハウスメイトたちとリビングで語り明かしたり、テレビやアニメを見たり、夏には花火をしたり、雪が降れば雪だるまを作ったり、バスケをしたりと、思い返せばそれっぽいこともしていた。

三畳という部屋ながら多くの人が遊びに来てくれた。

時には12人もの人が集まり、当然入りきれないので廊下に座ってもらったのも今思えば、くだらなくも儚い青春の1ページである。

物件探しを通して仲良くなった不動産会社に転職した人や、海外に結婚相手を探しに旅立った人や、結婚してもシェアハウスに住み続けちゃう人など、人の入れ替わりを経験しながらも、当初は一年のみの予定だったシェアハウス「ストライプシープ」の運営は、一年半を迎えていた。

そして僕は2015年を迎えると共に再び海外へ飛び立ちシェアハウスを離れた。

シェアハウス「ストライプシープ」が解散を迎える

そして解散を迎える

そして、シェアハウス「ストライプシープ」が解散を迎える。

きっかけは単純で、住居人の一人が家賃を支払うことが難しくなるということ。

また、僕が海外で生活していて、帰国後もシェアハウスに戻ることは無いだろうし、他の住居人も春から新生活が始まる予定で解散するにはいい機会かなということで三月いっぱいでの解散が決まった。

僕の尊敬する社会学者の宮台真司さんの言葉を引用させていただく。

最初は、意識のある人間がメディアに関わりだす。そこでは実りのあるコミュニケーションが展開される。だから、後に評判がたってくる。すると、有象無象が集まってくる。彼らにはスキルもないし価値観も甘いので、デタラメをやり始める。それでいわゆる「荒れてくる」わけだ。

 次に、リーダー層たちが抜けると、その頃にまた新しいメディアが登場する。そこでも最初は楽しめるんだけど、しばらくすると、評判が有象無象を呼んでくる――同じことの繰り返しなんだよ。3年単位で25年間それを繰り返しているのを見ているからね。

 それと同じことがシェアハウス、というよりトレンド全般にはいえるんだ。

 そうならないために大切なキーワードは「価値」だね。

 まず「価値」を訴える。例えば、自分たちのシェアハウスには、従来のものにはない濃密なコミュニケーションをしたいんだ、とね。それは、俺たちはプログラミングをやる集団だとか、アート集団なんだとか、なんでもいい。

 ある価値、フレームを出したらそのフレームをベースにして人を選ぶことが重要になる。それは、リーダー層や共同作業やっている人たちが独断と偏見で選んでいけばいい。いわゆる「フォロワー切り」の勇気を持つことだ。

 便利、快適、寂しくないとか、いいとこ取りをしたがる受け身の人たちは悪いけどよそでやってくれ、と宣言すればいい。そういったことをやっていかないと、不動産業界の事情から生じるディベロッパーの広告宣伝に踊らされてやってくる人たちの中で、自治や相互扶助や価値を目指す共同体は埋没していってしまうよね。

共同体について宮台真司さんから多くの影響を受けていた僕は、コンセプトが固まっていて、同じ方向を向いた人間が集まるシェアハウスというのはとても面白くて有意義なものであって、ストライプシープのような無秩序なシェアハウスは研究対象でしかないと思っていた。

でも、それは社会に対する新しい共同体の形を訴え、継続させていくために重要なものであって、バラバラな個性・スキル・知識を持った人が集まるシェアハウスで、厳格なルールが無いからこそ見えてくる価値観の違いや、生活意識を知るということも、共同生活のなかでしか見えてこない有意義でかけがえの無い財産になるのだということを実感した。

17歳で実家を出てから多くの人と共同生活を送ってきたし、カナダでも、オーストラリアでも様々な国籍の人と生活をしてきた。

他人と一つ屋根の下に住むということは、ぶつかることもあれば、受け入れられないこともあるだろう。

しかし、僕はそこで、色々なことを受け入れる土壌を育て、自分という人間が何を望み、何を良しとしないのかを日常のなかで学んできたのだと思う。

もちろん、明確なコンセプトのもと集まる共同体は面白いだろうし、管理会社が決めたルールの中で生活する共同体は楽だろう。

厳格にルールを決めなければ、権力を持っていたオーナー不在で、色々な個性を持った人達が集まるシェアハウスを存続させるのは難しいことだと実感している。

しかし、だからこそ、厳格なルールなんて存在しない「ストライプシープ」はおもしろかったし、こうやって突然に解散をするという決断は、どこまでも真っ当であり、そうであるべきなのである。

なぜならストライプシープは中二病患者が、漫画に影響を受けて「かっこいい!シェアハウスやっちゃおう!」で始めただけのものなのだから。

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KKK

KKK

代表中二病社会学会
WEB関係の仕事と並行し、若者の人間行動学に関する仕事をしています。 他、新宿にてイベントBARを三店舗運営。中野にてシェアハウスを運営。

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