2015年芥川賞受賞
「火花」を読了しました。
この人はこれまでの人生をしっかりと「無視して生きても支障のないこと」と向き合いながら生きてきたのだなと感じることができ、それだけで十分なように思えてしまう。
なんというか、魅力という点でいうとそれくらいなものであり、それくらいの作品だからこそ、やけに好感を持てたのだと思う。
芥川賞という言葉に大きな期待をしてしまう人も多いと思うのだけど、芥川賞ってこんな感じ。
もし、こんなのが芥川賞かよと思うのなら、ほかの芥川賞受賞作品に触れてみればいい。
確かに決して文章力で読み手を圧倒するような作品ではないが、結果的にその甘さが笑いのポイントでしっかり笑えるリズムを作っている。
恐らく実体験に基づき執筆されているのだと思うのだが、そのせいで小説というより自伝を読んでいる感覚になってしまい、物語に入り込めなかったというのは、あれだけ有名な芸人が書いているのだから仕方が無いとはいえ、作品に向き合ううえで省くべき情報を省ききれなかったことは悔しく思う。
そもそも又吉が小説を書いている事すら知らなかったのだが、帰国したら物凄い注目されていて、僕はいつか又吉が小説を書くのなら是非読んでみたいと思っていたので嬉しいサプライズだった。
というのも、以前に雑誌か番組の企画かでおすすめの小説に「赤頭巾ちゃん気をつけて」という50年前に芥川賞を受賞した作品をあげていたのが印象に残っていた。
この作品は僕にとって特別な作品で、一番好きなのかと問われるとなんとも答え難いのだけれどもおすすめの一冊を問われればこの小説しかない。
本当に素晴らしい作品で、芥川賞受賞作の中でも特に時代に大きな影響を与えた作品だが、読書家の中でも知る人はそう多くない。
僕は、これまで「赤頭巾ちゃん気をつけて」という作品を知っている人に出会ったこともないので、それだけでとても嬉しく感じていた。
「赤頭巾ちゃん気をつけて」という作品は、「無視して生きても支障のないこと」としっかり向き合うことで世間とのズレなんかを感じてしまい生きるのが億劫になってしまうのだけど、日常の些細な出来事を通して、「無視して生きても支障のないこと」と向き合い続ける覚悟を決めるまでを描いた作品。
「火花」という作品の全体を見たときに「赤頭巾ちゃん気をつけて」と似ているかと言われれば、特にそんなことはない。
けれど、「無視して生きても支障のないこと」としっかり向き合う若者の姿勢(純文学とカテゴライズするのなら普遍的なテーマなのだろうけど)と、その根底にある、無限の広がりを感じさせる青い優しさは、「赤頭巾ちゃん気をつけて」を読み終えた時と同じく、僕をとても優しい気持ちにしてくれた。
「火花」の中でも吉祥寺は何度も出てくるスポットであり、吉祥寺に住んでいた頃に「百年」という古本屋で何度か又吉を見かけたことがある。
きっとそんな何気ない日常でもこの人は色々な「無視して生きても支障のないこと」にしっかり向き合いながら物事と向き合っていたのだろうかと、勝手に想像するとなんだかとても嬉しい気持ちになる。
KKK
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