回転木馬のデッド・ヒートな今の僕
オーストラリアから日本に戻る間に、東南アジアをまわることになっていたので、パソコンやら諸々の貴重品を詰めたスーツケースを日本に先に送っていたのだが、手続きミスで未だに届いていない。
僕らしいといえば僕らしいのだが、困ったことにカード類から免許証まであらゆるものをスーツケースに入れたまま送ってしまったので、帰国してからというもの、ひたすら困り果てている。
更に参ってしまうのが、新居は既に決まっているものの、リフォーム等が予想よりも長引き、暫く住めず、この1ヶ月というもの友人の家を渡り歩くような生活。(嫁と子供は嫁の実家にいる)
ああ、近況報告のようになってしまった。
僕の最近の話はまあいい。
兎に角、「回転木馬のデッド・ヒート」という村上春樹の短編集がそんな今の僕にぴったりな作品だったということが言いたかった。
村上春樹が実際に聞いた話を小説風に書き上げるという設定のせいで、有り得ても違和感のない日常が、とても遠いもののように感じてしまう作品。
特別に親近感を感じるキャラクターが登場するわけではないのだけど、僕の現状が(生活環境含め、モチベーションやら人間関係やら)僕の予測していたものとは大きく離れていて、リアリティを感じることが出来ないというか、なんだか落ち着かない今の生活と重なる。
この何もせずに日々を垂れ流す違和感は、大学五年生の頃にも味わっていたことを思い出した。
仕事と学業、その他諸々を詰め込み、平均睡眠時間を二時間まで減らして駆け抜けた大学四年間を終え、迎えた大学五年生。
仕事を辞め、会社の寮を出て彼女の家に転がり込んだ。
授業は一コマのみ。働きもせず、ひたすら読書と映画鑑賞をして、気が向いたらライブハウスに向かい、飽きるくらいセックスをしても持て余す時間。やることがなく、人に会うのもめんどくさく、遂には読書も映画鑑賞もめんどくさくなり、勉強をして過ごす日々。充実感は全くと言っていいほど得られず、不安ばかりが募っていった。
正確には、やるべきことはあった。起業も控えていたし、いくつかの講演も控えていた。
しかし、十分すぎる程の時間を手にしたところで、何に対してもモチベーションが上がらない。(これは、テストの為にバイトを休んで時間を作ったところで、無駄に机の片付けをして時間を消費してしまう高校生のアレだ。)
まぁ、片付ける机すらなくて、唯唯煙草を吸い続けていた。
そんな生活の中で、唯一正しい行いのように思えたのは、最寄駅の近くのカフェで読書をしながら、仕事終わりの彼女の帰りを迎えに行くことだった。あの時間だけは、周りのお客さん達へ向ける眼差しが違っていたように感じる。
なんて昔のことを思い出し、同時に救われながら、「回転木馬のデッド・ヒート」と共に今夜もカフェで友人の仕事終わりを待っているなう。
誰に追いつかれる訳でもなく、誰に追いつく訳でもない。一つの場所で、グルグル廻り続け、壮絶なデッド・ヒートを自分自身の『内部』で展開する。
そんな、呆れてしまう一ヶ月の最終日に読んだのがこの一冊。
KKK
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